大学の中にドキュメンタリー映画館を
「北方シネマ」設立趣意書
ドキュメンタリー映画はフィールドワーク研究によく似ています。現場に足をはこび、人や事物に出会い、ときにはそこに住みこみながら、時間をかけてひとつの事実をあきらかにし、さまざまな社会問題にたちむかう。表現方法はそれぞれにちがっても、関わる者の人間性そのものをそこに感じるのです。優れたドキュメンタリー映画には、撮られる者、撮る者、見る者の三者を有機的につなげていく力があります。
北九州市立大学ではこれまで「チョムスキー9・11」の上映(2003年4月)、「東アジア移住共生映画祭」の共同主催(2010年7月)などを通じ、広くドキュメンタリー映画を紹介する機会をつくってきました。大学で学ぶ学生たちにとって、こうした映画は世界に関心を持つ貴重な第一歩となります。また地域の人々との紐帯が生まれるきっかけにもなります。
さて、北九州市では、2014年から北九州市環境ミュージアムを会場に「東田シネマ」というドキュメンタリー映画の上映会が、毎月定期的に開催されてきました。「東田シネマ」では、映画配給などを手がける増永研一氏らが中心となり、力のあるドキュメンタリー映画を厳選し、市民にむけ紹介しています。おかげで北九州には、東京や大阪などの大都市でも機会が限られるドキュメンタリー映画を身近に鑑賞できる恵まれた映画環境が生まれています。私たちは3年目に入ろうとするこの取り組みと連携し、そうした機会をさらに多くの人々と共有したいと考え北方シネマを立ち上げました。
2017年4月より小倉南区の北九州市立大学を会場に、東田シネマからの配給作品や北方シネマ独自のプログラムを定期的に上映していきます。さらに知の拠点である大学という立地を生かし、テーマに関する知見や学識を持つ研究者や監督や制作者をまじえ作品について討論する機会を設けていきます。私たちは北方シネマを、大学の中にありながら地域に開かれている新しい「映画館」であると考えています。このちいさな試みが、やがて全国にひろがっていくことを願っています。
それでは、ご一緒に珠玉のドキュメンタリー映画を楽しみましょう。
(世話人 竹川大介)