北方シネマ

(*)上映回によって時間や場所が変更することもあります。毎回の案内をご確認ください
学内駐車場は使えません。お越しの際は公共交通機関をご利用下さい
北九州市小倉南区北方4-2-1
北九州市立大学 北方シネマ(竹川研究室)
【電話】080-6458-1184 (水曜を除く平日 11:00-17:00 応対)
【email】kitagata.cinema@gmail.com
【料金】前売予約1000円・当日1200円・シニア/障害者1000円・大学生/高校生500円(資料代)・中学生以下無料

2017年9月30日土曜日

『スケッチ・オブ・ミャーク』ゲストトークのお知らせ

ゲストトークテーマ:「文化の脱文脈化と芸術」


今回のゲストトークには、北方シネマ運営委員の竹川大介・神原ゆうこに加え、久留米大学の神本 秀爾(かみもと しゅうじ)さんをお迎えしてお送りします。
神本さんの専門分野は文化人類学・宗教研究・ポピュラー音楽研究。ジャマイカのレゲエを研究テーマに、民俗音楽の商品化などについても研究をされています。

ゲスト:久留米大学 神本秀爾さん
(宗教・ポピュラー音楽研究)


南洋のゴーギャンや浮世絵を模写したゴッホ、アフリカ彫刻の影響を受けたピカソやマチスなどなど、西洋アートの正解では民族芸術がもともともっていた文脈をはずし、アート作品化されるという現象がいたるところで起きています。

例えば、もともと宗教儀礼であった舞踏をケチャというかたちで作品化し、それを芸能山城組が日本で上演するのと同じプロセスを、映画監督である大西功一や久保田麻琴は宮古島の芸能を題材に実現したいと考えているのかもしれません。

『スケッチ・オブ・ミャーク』を通して、観光や商品化や芸術の世界で、いかにアートが意味から記号へ変わるのか。いかに文化が変容され消費されていくか、ということについて3人で語ってみたいと思います。

お楽しみに!


神本さんの簡単なプロフィールはこちらからご覧いただけます。
久留米大学HP 文学部国際文化学科


2017年9月1日金曜日

005『記憶の中のシベリア 祖父の思い出、ソウルからの手紙』

孫の世代が見つめた

シベリア抑留にまつわる2つの記憶

!九州初上陸作品!



『祖父の日記帳と私のビデオノート』(2013年)



私の祖父にはシベリア抑留の経験があった
戦争で、祖父は人を殺めたことがあるのだろうか
祖父の日記帳が、写真よりも映像よりも祖父に似ているような気がした
最後まで百姓として生きた祖父と戦争の記憶




百姓だった祖父が話すことはいつも決まっていた。天気と畑仕事のこと、そして戦時中にいた中国やシベリアのこと。

2000年、私は家から離れた大学で映像を学び始め、祖父と会うのは年に数回になった。私は祖父が戦争に行った年齢と同じ20代になり、当時祖父がどんな思いで生きていたのかに興味を持つようになった。何より、感情的な話をしない祖父は、私にとって家族の中で最も謎めいた人であった。

2004年から私は帰省する度にビデオカメラで祖父を撮影し、祖父は農作業の合間に当時のいろいろな話をしてくれた。しかしその話は断片的で、依然として私は祖父と心の距離を縮められないのを感じていた。

2010年に祖父は認知症により以前のように会話を交わすことが出来なくなり、その2年後に祖父は亡くなった。私は祖父の写真や日記、そして自分の撮った映像の断片を用いて私の知る祖父の姿を形作りたいと思った。(久保田桂子監督の言葉)


『海へ 朴さんの手紙』(2016年)




ソウルに暮らす韓国人の朴さんは、シベリア抑留を経験した日本兵だった
日本軍で一緒だった親友 山根さんへ送った手紙は、届くことがなかった

『お元気ですか
 私、朝鮮人 朴道興です。
 山根秋夫さんが、見たくて見たくてたまらないです。
 もしこの手紙を見たら、すぐ、便りを頼みます。』




この作品は、シベリア抑留を経験した元日本兵の朴さんが戦友・山根さんへ宛てて書いた手紙についての物語です。

私はシベリア抑留を経験した祖父を持ち、2013年に祖父についてのドキュメンタリーを制作しました。その中で、2004年より自分の祖父をはじめとする、日本、韓国のシベリア抑留者の体験談の聞き取りを行っており、2005年に韓国へ取材に行きました。そこでシベリア抑留を経験した7人の元日本兵の方々にお話を伺いましたが、その中に朴道興さんがいました。他の人が植民地時代や軍隊での苦労や日本への憎しみを語る中、朴さんは始終日本軍時代に出会った日本人の友人・山根のことを語り、「今も彼を思い出すと眠れない時がある」と目に涙を浮かべました。私は帰国後シベリアの抑留者名簿で山根さんを探しました。しかし彼の名前はなく、朴さんから聞いた彼の住所も存在しませんでした。

その後も朴さんと手紙のやりとりは続きました。朴さんは1997年頃、山根さんに宛てて沢山の手紙を送ったことを教えてくれました。その手紙はどれも住所が不明瞭なため届きませんでした。私はその手紙を一通預かり、そこに書かれた地名をたよりにふたりの足跡を辿りながら山根さんの手がかりを探しました。

私が朴さんと出会ってから2年後、ついに山根さんの消息を知ることが叶いましたが、彼はすでに亡くなっていました。私は山根さんの命日に、彼の妻である山根みすえさんに会うために広島へ向かいました。みすえさんはかつて夫にあてて書いたラブレターのことを話してくれました。

この作品は、手紙についての物語です。私はふたりの人と出会い、彼らは私に今は亡き大切な人への手紙を読んでくれました。旅の途中、船の上で「行くあてのない手紙や、そこに込められた想いはどこへ行くんだろう」とよく考えていました。

この作品が、彼らの想いを満たす器になればいいと思います。作品を作り終えた今、そうした時、風景の中に彼らの存在を感じます。朴さんやみすえさんは、こんな風に日々山根さんと再会し、ずっと一緒に生きてきたのだろうと思ったのです。


珠玉のドキュメンタリー映画2作品を一挙上映




予告編はこちらです




誰もが持っている、心にしまっておきたい想い出
その扉を少しだけ開けてみたかった




「シベリア抑留」ってなに?こちらに簡単な解説が載っています。




『祖父の日記帳と私のビデオノート』
監督・撮影・編集:久保田桂子
出演:久保田直人
2013/日本/デジタル/40分

『海へ 朴さんの手紙』
監督・撮影・編集:久保田桂子
出演:朴道興(パク ドフン)山根みすえ 山根秋夫(写真)
2016/日本/デジタル/70分
記憶の中のシベリア 公式サイト:http://siberia-memory.net/index.html

姉妹館の東田シネマでは、3日間の上映です。
久保田桂子監督来場予定
08/25(金) 10:30/13:00/15:30/18:0008/26(土) 10:30/13:00/15:30/18:0008/27(日) 10:30/13:00/15:30/18:00
お問い合わせはこちらからどうぞ。


 久保田監督の書籍、8月より発売!




シベリア抑留体験者を取材したドキュメンタリー作品『祖父の日記帳と私のビデオノート』(2013年)、『海へ 朴さんの手紙』(2016年)を制作した久保田桂子監督が、10年以上にわたった取材の旅を綴った書籍がこのたび発売されました。

北方シネマでは物販にて販売する予定ですが、すぐに手元に欲しいという方は、以下のURLより詳細をご覧ください。

東洋書店新社「記憶の中のシベリア」:http://toyoshoten.com/books/495


さらには、新聞掲載も




東京新聞の地方版での掲載ですが、久保田桂子監督のインタビューが掲載されています。(2016年11月24日 東京新聞)
*画像はクリックすることで拡大できます。

東田シネマ・北方シネマでの上映をお楽しみに!